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(その壱) 頭痛がすれば脳腫瘍 関節痛なら骨肉腫 すぐそう怯えてしまう癖がこの歳になっても治りません ブラックジャックを幼少期に読みすぎた兄海です はじめまして お題は【カギ】 今程 芥川賞取得者の知人が居ない己の境遇を嘆く時であり又立ち向かう 時でもあります 恐るべしチキチキ いきなりなのでいきなりの話ですが実家が寺です ドが三ツ星付く貧乏寺で過去には鼠小僧のお陰で何とか今まで持ち 堪えてきたのだろうと我乍ら実家にかける言葉もありません で 説法の話ではありません 説法の意味も分かりません【鍵】の話です (その弐) 寺や教会という所は昔 案外鍵をかけないのが習慣でした 悩める子羊(寺の場合は凡夫か)がいつでも駆け込める仕様の為です 私が子供の頃見知らぬ不思議なおじさん達がよく何かを呟きつつ昼夜問 わず突然訪ねて来ました 母が当然の様に応対し客間に招き色々おじさんの話を聞いていました 私はその間何をするかというと不思議おじさんの為の料理番を命ぜら れていました デビューは小学二年生位です 卵を焼き味噌汁を溶かし野菜を炒め丼にご飯を山盛りによそいました (その参) あんまり沢山不思議ビジターが来るので中学時代にはもう定食屋を出 せる程の腕になり(但しお一人様限定)夜中のガラガラという玄関の 音に気付くとバッと起きて横で就寝中の母に「任務」と囁き「遂行」 と蹴とばされて台所にヨタヨタと立ちました 料理を運んだ後は近くの駐在さんに電話をします 駐在さんも慣れたもので不思議ビジターがガツガツと食事をし一服し 我が身の哀れを訴えぼちぼちお金の無心をする頃に「こんちゃーァ」 と公務員オーラを消し如何にも回覧板だよォ的でやって来ます (その四) 不思議ビジターは満腹と心の吐露を終え油断しているモードなので 最初はポケッと駐在さんを見上げますが制服に気付くな否やアワワと たじろぎ始めます あのなァと駐在さん お寺さんやからって呼び鈴もせんで上がり込むのは不法侵入やで いつからおったか知らんけど何やら飯も食うとるやないか この飯はなァ 此処ん所の嬢ちゃんが黙って作ってくれてるんやで まだ子供やのに刺身迄切ってくれてるやないか あんた子供おるんか もしおって夜中にワケ分からん男が来たらフツー怖がるで あんたも怒るやろ 等と呑気な感じでしかし厳しい口調です (その五) 不思議ビジターは だって寺やから助けるのが商売やないかと気弱 そうに文句を言います 儲かってんのやろ とくだらない事も言います そこで初めて駐在さんが怒ります アホかっ!儲かってる寺に見えんのか此処がっ! と 子供心に何かしっくりこない物言いだなと駐在さんに対して思いまし たが 凹む暇も無く畳み掛けるよに この食べ物もなァ 明日の此処の人数分から引いとんのや! 明日此処んちは食うもん寂しなる!そんで金くれやら情けない思わん のか!おんどれは!五体満足で働きもせんで! あァ?コラ貴様!顔上げんかあっ!! (その六) 警官もヤ○ザもたいして変わらんなとしみじみ思ったひとときでした あんた常習やな とちょっと落ち着いた駐在さん 寺に鍵かかってないの知ってて今迄何軒ハシゴしてきたんや うつ向く不思議ビジター ミニスターをふかして動じない母 やはり刺身を回想する私 暫くして不思議ビジターが小さく言いました 二千円でいいんで・・・ 駐在さんが怒鳴る前に母がぴしゃり 何に使うん? 家帰りたいんでタクシー代 家あんの?駐在さんに送ってもらい パトカー乗るの嫌やし近所に格好つかんもん 大変やな うん (その七) うん じゃねぇよと刺身の事も忘れて私はついにブチ切れ本当に 襖を足で蹴り倒し客間に入り込みました(当時中学一年) よう聞けおっさん! 駐在さんと不思議ビジターはギョッとして私に振り向きましたが 母は淡々と喫煙していました 寺はな個人の家とちゃうねん!簡単に言うと管理してる丈やねん! 好き勝手できんねん!寺の官房長官は門徒総代ゆうてなあいつの 許可無しでは一円も動かせられへんのや!私ら家族口座と寺口座 別や!あんたが食った材料は家族口座から出とんねん!さっきの 刺身も寺の金と違う!とっとと歩いて帰れボケ! (その八) この頃から寺の娘オーラは消滅していた模様です 寺の娘は楚楚と していると思いがちな方々から非難GOGOでしたがそんな勝手 な幻想を持たれても困るのです 周りも困っていたでしょうが 怖い子やな と不思議ビジターは軽蔑の口調で母に言いました 母は鼻で笑って私にやっと視線を向け 確かにな と答えました (その九) だからこそこの子は寺に生まれてきたんよ 私にしか仏さんが育てられへん思て寄越した大事な預かりもんや フツーの家庭に生まれたらもうとっくにお縄かもしれん 私はこの子が暴言を吐く度に悲しいけどな 本気で表現してんの見ると可哀想で愛しゅうてたまらん 親馬鹿やな と不思議ビジター いや違う と母 私が馬鹿なんや だから私も寺に送られた アホな子程可愛いゆうアレや 仏さんはアホから救ってくからな 駐在さんはもうそこ迄言わんでええやんと母に何と無く申し訳無い 口調で苦笑いしました 襖 ごめんなと私は母に謝りました (その拾) 役目が終わったからええよと母は笑いました 何?と聞き返すと あんな 何にでも役目があんのよ それもたった一つ位な あんたに蹴とばされる為に今迄襖も待っとっんや御礼言っとき 何?とまだしつこい私 襖もまさかこれかとは分からんやったやろうなァ と母 例えば私の役目は何なん? それは誰にも分からん 縁が決める 母は暫く不思議ビジターを見て鍵持っとるかと尋ねました 鍵て何? あんたんちの家の鍵 ・・持っとるよ 食ったら寝るのが一番や 帰り 二千円は やらん打ち止めしい あんた いつでも来てええ 金はやらん (その拾壱) 不思議ビジターは不服な顔で母を睨んでいました そして このケチがと呟きました 私はもう怒る気も失せて刺身や襖の事を考えていました 駐在さんがグイと不思議ビジターの腕を掴んで立たせました 礼 言え と肩を突きました 俺 警察行くんかとビビリビジター いや家迄送る 此処のおばちゃんに怒られるのは怖いからな 嬢ちゃんより凄いで本気で怒ったら だからはよ行こ 不思議ビジターは少しの間をおいて 鍵かけとけや と母に説教口調 で言いました 母はそれにはシカトで駐在さんに すまんけどよろしゅうなァと片手 を挙げました (その拾弐) 私は母に彼等が帰った後 鍵をもうかけたらどうかと提案しました 母は相変わらずシカトです なあ ともう一度 私 もしも・・と灰皿に煙草を押し付け乍ら母が言いました 此処の鍵が閉まってたらさっきのおっさん何処ぞで鬱憤晴らすで 誰かが血ィ流す事件が起こるより此処で毒付く方がええやん 私は納得いきませんでした ああいう輩は同じ事またするよ綺麗事言うな 面倒臭いし 誰でも面倒臭いから悲しいんやんか あんたがさっき怒ったのは 悲しいのが頂点にきたからやろ それは違う!本当にだらしないし無礼やったからや! そういうのを悲しいとちょっと思ってみ 立ち位置変えてみ どんな屁理屈でも基本は皆身勝手で悲しいよ 意味が分からん 分かる時までやることをやっとったらええやん 手遅れになるで! なるかもな でもその時はそこで役目の終りや なんか無責任やな 人より優れてるなんてみじんも思うな そっちの方がよっぽどアホや 教えられてるんやで あんたも私も嫌なことから 嫌なことで成り立っとんのがいつか見える 私はもう眠いので後片付けもせず床につきました そして自分で玄関に鍵をかけようと決心しました (その拾四) いたちごっこになっても知るかと憤慨しながら布団をかぶりました 翌日私は鍵をかけました 呼び鈴の線も切りました すると不思議なことに気持ちが軽くなり次の瞬間猛烈に重くなりました こんな事しても起こるもんは起こるのかもしれないと力が抜けて鍵を外 し呼び鈴の線を切った事を自首しました 母は へえ と返した丈で普段と変わりが見えませんでした 私が高校を卒業して家を出る迄やはり多数の不思議ビジターはやって来 ましたが もうそれについて考える事は止めてしまいました (その拾伍) 月日が流れ弟も結婚が決まった頃帰郷し玄関を開けようとしたら鍵がか かっていました へっ?と思い呼び鈴を鳴らそうとしたらその横にS○COMというシール がぺたり呼び鈴を必要以上に押し弟が呑気に出てきました 鍵かける様になったん?と聞くと うんたまにとの答 何で?守りに入ったか?と更に問うと さあ気付いたらこうなってたけど との由 母と対面し挨拶も放り投げてどういう事かと詰め寄りました ああ と 母 SE○OMさんが来て頼まれたから 使ってんの!? 使う機会はないなァ 鍵は? 嫁が気遣い出来る子で (その拾六) 開いた口が塞がりません 鍵無しの意味を嫁に言った? 言ったよ でもあの子がそれは如何なもんかと怖がるんで 当たり前や!! 一体私の少女時代は何だったのか脱力です 私だって怖かったのに? 嫁と私はとても仲が良く実の家族や友人にも話せない事をよく聞い てもらいます 嫁にしたら私が不思議ビジターになった様なもので歴史は繰り返さ れるなと愕然とするばかりの日々です 長文になりましたが嫁は襖を今の所蹴り倒してはいない様です 色んな意味での鍵を私は彼女に託して家を後にしました 後にした侭です (完) 次のお題は 【カーテン】でお願いします
by wacky_racers
| 2007-06-14 17:18
| 兄海(・・・)
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